人工透析が自業自得。病気の人から見ればとんでもないことを言っているし健康な人から見ればその通りだと思うかもしれないことなのでしょうが、長谷川豊氏のブログ内容は書かれているようなそんな簡単な話ではありません。今回長谷川豊氏が挙げているのは糖尿病腎症といい、糖尿病で腎臓を悪くして人工透析をするようになった方のことです。いわゆる合併症というやつです。長谷川豊氏が糖尿病や人工透析についてどの程度勉強して書いたのかは疑問です。
- 人工透析の患者さんを理解していますか?
- 長谷川豊氏が見落としている医療の現状
人工透析の患者さんを理解していますか?
長谷川豊ブログは挑戦的で炎上商法とも言えるような書き方です。自身の発言力を考えるともう少し考えてから発言してもらいたいと思うことも多々あります。今回の長谷川豊氏のブログのタイトルも「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」というとても挑発的なタイトルです。健康的な方から見ればその通りと思う方もいるでしょうし、透析患者さんから見ればふざけた話です。
長谷川豊氏は自業自得の人工透析患者と対象を絞っているので、糖尿病腎症から人工透析を行っている患者さんを対象に書いていることでなのでしょう。それであれば「遺伝的」「薬の副作用」「妊娠中毒症」などで人工透析を受けている人は除外しているということにしっかりと触れておくべきです。長谷川豊氏は文末で「先天的な遺伝的理由で人工透析をしている方を罵倒するものではない」と触れていますが、これはブログの冒頭で触れておくべき内容です。
そして内容については恐らく長谷川豊氏は糖尿病腎症や人工透析の事をほとんど勉強せずに医者の話を鵜呑みにして書いた内容なのだろうということが伺えます。
ディズニーの横入りを人工透析患者のどれくらいの人がしていると思っているのか長谷川豊氏に直接聞いてみたいですね。人工透析患者の年齢分布を調べましたか?50歳以下の人工透析患者は人工透析をしている全体の10%ほどです。40歳以下なんて全体の4%以下です。恐らく若年層に理解させようとしての事だと思いますが、ほとんど起こってもいない現状であるディズニーの横入りを強調するのはいかがなものか。
長谷川豊氏は様々なサービスが受けられることを事羨まし気に書いていますが人工透析患者がどのくらい自由がないか知ってて書いているのでしょうか?週3回の人工透析、1日4~5時間かかります。一度血液を体外に出して機械でろ過して再び体内に戻すわけですが、外に出され冷えた血液が体内に戻ります。すると体温が下がるのでしばらくは思うように動けなくなります。身体は常に怠い状態です。知り合いの透析患者の方が言っていましたが、旅行先で人工透析施設を確保してまで旅行に行きたいとは思わないそうです。
長谷川豊氏に問いたい。
健康な身体でお金を払ってサービスを受ける方がいいですか?人工透析で週3回1日の4分の1は病院での生活を強いられ、身体が重く思うように動けなくなりますがサービスが拡充される方がいいですか?
長谷川豊氏の論調からすると病気の人の身体のことは全く理解していませんよね。しかしこれは仕方ない面もあります。
病気になった方は大抵言います。健康はお金では買えない、病気になって初めて健康のありがたさが分かると。私がこのような思考に至ったのも仕事でたくさんの病気の人に関わったからです。病気になった方々が病気の辛さや健康のありがたさを教えてくれた結果、病気について深く考えるようになり現在の思考に至りました。健康だと見えないことってたくさんあるんです。
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長谷川豊氏が見落としている医療の現状
長谷川豊氏はあくまで医者は食事指導をしている前提で話していますがこの時点で気付かなかったのでしょうか。人工透析患者の事をお金にしか見えない医者が食事指導を真剣にするわけがないですよね。だって放っておけば「金の成る木」なのですから。育つ前に伐採はしませんよね。
自分でも言ってますよね。HbA1C(ヘモグロビンA1C)は簡単に下げられるって。たった2ヶ月、バランスの取れた食事と1日15分の運動でHbA1C(ヘモグロビンA1C)が7から5まで下がったタレントさんがいたって。その通りで初期に徹底して医者が保存療法を行っていれば人工透析患者はここまで膨らんではいないのです。もっと言ってしまえば入院させてキッチリ管理して保存療法を行えばHbA1Cは下がります。ただし病床が足りない現状では難しくもあるそうです。逆に言えば糖尿病の専門病院、病床の数をもっと増やせば糖尿病患者数は減らすことができるということです。しかし収益が上がらないのでやらないだけなのです。
そして2ヶ月で簡単に下げられる人というのは糖尿病初期の方、もしくは悪くなりかけの方です。人工透析を始める患者さんのHbA1Cは10を超えている方がほとんどです。糖尿病は医療関係者の中では厄介病のひとつとして挙げられています。理由は痛くもかゆくもないからです。高血圧なども同じですよね。痛くもかゆくもないから放置しがち、放置した結果結果悪くなって取り返しがつかなくなるのです。
糖尿病からの大きな合併症は糖尿病腎症を含め3つあります。まず糖尿病性網膜症。糖尿病の合併症はまずは目が見えなくなってくる方が多いです。そして糖尿病性神経障害。足先や手先がピリピリしたり感覚が鈍ってきます。そして最後は糖尿病腎症。人工透析の始まりです。
大抵の方は目が見えなくなってくると不安になり怖くなります。しかし合併症が始まるのはHbA1Cが10を超える患者さんがほとんどです。10を超えている患者さんが2ヶ月でHbA1Cを5まで落とすことなど至難の業です。むしろ頑張っても頑張っても改善せずにドンドン悪くなっていきます。そして合併症が始まるという方がほとんどです。
ここを理解せずに自業自得だとか殺せとかよく言うなと思います。もちろん暴飲暴食や生活習慣が原因なのは自業自得の面があるのは確かです。しかし医者にはもっと出来ることがあるということを理解して発言すべきだと思います。
先ほど先述した保存療法というのがあります。これは徹底した食事療法と薬品による治療です。しかしこれに力を入れている病院はあまりありません。理由は簡単。時間も手間もかかり医療機関側の負担が大きいのです。そして何より見返りが少ない。医療機関の患者一人当たりの年間収入は人工透析だと500万円、これに対して保存療法だと60万円と雲泥の差が生じます。長谷川豊氏もブログで触れていますよね。人工透析を中心にやっている病院は楽な運営状況でたいへんなもうけをだしている、と。苦労して収入が少ない保存療法より楽で高収入な人工透析を医療機関が選択するのは当然の流れなのです。
長谷川豊氏は年金と保険のシステムを考えたバカと罵っていますが、そのバカが考えた保険のシステムを大いに利用して金を巻き上げているのが医者です。もちろんみんながみんなとは言いません。そんな医者ばかりでないのもよく知っています。でもね、人工透析に至るまでに保存療法をキチンと医者が行っていれば人工透析を行う必要がある患者の数はここまで膨らんでいないという現実をもっと直視すべきなのです。
人工透析患者の年齢分布について少し触れましたが聡明な方なら既にお判りでしょう。今後少子高齢化がどんどん進んでいきます。つまりは糖尿病腎症からの人工透析患者が今よりももっと増え続けていくということでもあります。現に年間で1万人を超えるペースで人工透析患者は今も増え続けています。
長谷川豊氏の言うように糖尿病が悪くなるのは本人の問題ももちろんあるとは思います。しかし糖尿病からの透析患者を罵るよりも、ディズニーの横入りとかほとんど起こっていない現実を主張するよりももっと主張すべき大切なことが他にあるはずです。年金や健康保険のシステムには大いに疑問があるのは確かです。その点に関しては同意しますしドンドン主張してもらいたい。しかしその健康保険のシステムを利用し収益を上げている医者も同罪だということを同時に主張すべきなのです。健康保険のシステムがなければ透析の代金を支払えなくなる方がほとんどなので医者も保存療法を選択しているはずなのですから。