ここ近年北海道でのヒグマの出没が目立ちます。それに伴って「駆除するなんてかわいそう」「保護してほしい」などのクレームが多いという話をよく耳にします。北海道に住んでいるのならまずこういった発想は出てきません。事情を知らない道外の人や謎の動物愛護団体がほとんどです。そういった方にぜひ知ってほしい北海道のヒグマ事情です。
- ヒグマが増えた理由
- 北海道でヒグマの出没が増えている理由
スポンサーリンク
北海道でヒグマが増えた理由
ここ近年ヒグマの目撃情報が非常に増えました。私は道外からの移住者なのでヒグマについて個人的にも調べていますし非常に興味をもって注視しています。
ヒグマの出没が増えた理由について考える際に切っても切り離せないのがヒグマの個体数そのものの増加です。その経緯について知っておくことでヒグマについての理解が深まると思います。
ヒグマの生息数
北海道が公式に発表している資料によると現在推定の生息数は約11,700頭とされています。※実際にヒグマの生息数は正確に把握することは出来ないのでこれは蓄積された科学的データを基にシミュレーションして計算している中央値、つまり推定最大数は約18,000、推定最低数は6,000ということになります。
さて、ではどのくらい増えたのでしょうか?ヒグマの春駆除が取りやめになった1990年以降のデータしかありませんでしたが、その当時から比べると2倍以上の個体数が生存していると考えられています。
ヒグマが増加した理由
増加の原因のひとつに春駆除の廃止という声がよく上がります。
昔は捕獲奨励金制度などもあり、年間に駆除される数は500頭を超えていたそうです。しかし「研究の進展」「個体数の減少」「自然保護の機運の高まり」などの影響で1990年頃には捕獲頭数は200頭くらいまで減少しました。ちなみに春駆除が取りやめになったのも上記の理由が主な原因です。
しかし、それなら「春駆除を再開すればいい」といった安易な考えで解決する問題でもありません。実はヒグマと言っても北海道では5地域(細かくは6地域)に分類しており、地域によって個体数の差は大きく異なります。
先ほど北海道には約11,700頭のヒグマが生息していると説明しましたが、地域で分けると日高・夕張地域が最も多い4,260頭(36.4%)、以後、道東・宗谷西部2,331頭(19.9%)、渡島半島1,843頭(15.7%)、道東・宗谷東部1,653頭(14.1%)。残りの2地域が天塩・増毛が852頭(7.2%)、積丹・恵庭757頭(6.4%)です。御覧になると分かる通り、地域によって偏りがかなりあります。そして問題になっているのは人が住んでいる地域に出没するヒグマなのです。
北海道でヒグマの出没が増えている理由
北海道では近年ヒグマに遭遇する件数が増えています。特に今までなかったような場所での遭遇、農業被害も年々増加しています。理由は以下の通り。
- ヒグマの個体数の増加
- ヒグマの食糧問題
- 里山の減少による境界の曖昧化
ヒグマの個体数の増加
ヒグマの増加については先述しましたが、それによって2次的にいくつかの問題が出てきます。
子熊の独り立ち
まず一つは子熊の独り立ち。成長した子熊は通常1歳半から2歳半の夏ころに独り立ちします。雌は母熊の近くで生活しますが、雄のヒグマは近親交配を避けるために遠くへ移動するそうです。ヒグマの1日の移動距離はメスは数十キロ、オスは数百キロと言われていますがこの辺りも関係しているのかもしれません。そしてこの独り立ちの際に若い雄ぐまは迷って市街地に出てしまうことがあるそうです。
繁殖期に起こる問題
ヒグマは5月から7月が繁殖期です。他の動物でも見られることですが、既に子供がいる雌は繁殖に参加しません。そこで起こるのが子殺しです。他の動物でも見られることがありますが、ヒグマも子供を殺してしまえば雌は子孫を残すためにまた繁殖行動に移るため、雄ぐまは敢えて子殺しをします。もちろん雌も自分の子供を殺されまいと抵抗します。その一環として雄ぐまに襲い掛かりますし、雄ぐまから逃げます。逃げる際には雄ぐまのテリトリー外まで逃げようとするので市街地の近くまで来てしまうことがあるのです。
近年札幌の三角山でヒグマの親子の巣穴が見つかりましたが、これも雄ぐまの接触を防ぐために市街地の近くに巣穴を作ったのかもしれませんね。
また、稀に車にヒグマが突っ込んできたというニュースを見かけますが、母ぐまが子供を殺されまいと抵抗をする一環だったのではないでしょうか。
ヒグマの食糧問題
個体数が増えれば必然的に食料は減りますが、それに追い打ちをかけているのがエゾシカの増加だと思います。近年エゾシカは増えすぎて有害駆除の対象になるほどです。
クマというと肉食なイメージがありますが雑食です。主にクルミやドングリなどの木の実を多く食べます。鮭を取っている写真を見かけるように魚も食べますが、多くは木の実を食べていうそうです。しかしエゾシカの増加で木の実が減少し、食料を探しているうちに市街地に出てしまうケースもあると考えています。
里山の減少による境界の曖昧化
郊外でヒグマが多くみられるようになった理由が里山の減少にあるようです。
日本全国で過疎が進んでいるように、北海道でも過疎が進んでいる地域が多いです。それによって郊外の山では手入れが行われなくなり、ヒグマのテリトリーが段々と人が住んでいるところまで広がっているそうです。
この対策として、草刈りをしたり見通しがいい場所を増やすことでヒグマのテリトリーを広げない努力を行っていますが、夜は効果が薄いのかなと個人的に思います。他にも電気柵をで囲ったりしますが、中には「OSO18」のように頭のいい個体もおり対策に手を焼くケースもあります。
ヒグマによる農作物などの被害はドンドン増えており、令和2年は約2億5千万まで膨らんでいます。更に、近くには人が住んでいる地域があるので非常に危険です。市街地と違うのは、食べ物があるところにはヒグマは何度も訪れます。ヒグマがかわいそうだという方がいますが、駆除しなかったために人が死んでしまったらどう思いますか?私も動物は大好きなので可哀そうと思うところはありますが、共存共栄の基、人間のテリトリーに入らせないように駆除するのは仕方のないことなのです。
ヒグマについて様々なことを書きましたがここでは主に以下の事をまとめました。
- ヒグマが増えている理由
- 北海道でヒグマの出没が増えている理由
読んでくれた方が少しでもヒグマについての認識が深まると嬉しいです。