長嶺駐韓大使が帰任することになって世論は真っ二つに意見が割れているようです。大きく分けると「慰安婦像問題が全く解決していないのに帰任するとまた韓国に舐められる」「有事の際の邦人保護が目的なのだから帰任させるべき」という二つの意見に分かれています。長峰駐韓大使が帰任する理由に邦人保護が挙げられていますがもちろん他にも大きな理由があります。
駐韓大使帰任は帰任する理由は「邦人保護」だけが目的ではない
4日の夜、長嶺駐韓大使が帰任します。これについて岸田文雄外相が理由を話しています。邦人保護という目的が一人歩きしているようですが、岸田外相が発表した全文から理由を抽出すると以下の3点が今回長峰駐韓大使が帰任する理由に挙げられています。
- 韓国が政権移行期にある中で情報収集など、次期政権の誕生に十分備える必要がある
- 北朝鮮問題に対処する上で高いレベルでの緻密な情報交換を行い緊密な連携を図る必要がある
- 邦人保護に万全を期するとの観点を踏まえたもの
韓国が政権移行期にある中で情報収集など、次期政権の誕生に十分備える必要がある
これはアメリカで「トランプ大統領が当選したときドタバタした経緯があるから」だと思います。朴槿恵元大統領が逮捕され、世論は慰安婦像問題に対する日韓合意について否定的です。新しく当選するであろう大統領候補達も世論に押され皆日韓合意について否定的な見解を述べています。世論を無視して大統領になることは出来ないので当たり前といえば当たり前だと思います。
ただ、当選するまでのリップサービスの可能性も全くないわけではないと思います。世論を無視はできないので何かしらの対応はとると思いますが、どういった対応を取るかは当選した候補者により全く違ってくると思います。
国民同士では嫌韓嫌日が進んでいる両国でしょうが、政府間レベルとしては連携を取ってアジアの問題に対処していきたいというのが本音ではないでしょうか。これは伊外相の対応からも読み取ることが出来ると思います。
利害は個人と国とでは全く違うので民意と政府の思惑は必ずしも一致しません。日本政府としては長峰駐韓大使を帰任させ、新大統領に対する情報を事前に出来る限り集めておきたいといったところではないでしょうか。
北朝鮮問題に対処する上で高いレベルでの緻密な情報交換を行い緊密な連携を図る必要がある
長峰駐韓大使が帰任する理由のひとつに北朝鮮問題を挙げていますがこれは何も今に始まったことではありません。ミサイルを発射したり核実験を行ったりと不穏な動きを見せているのも事実ですが、戦争が開始されるほど両国の関係が緊迫しているのかと言われればそこまでの問題には至っていないと思います。これは韓国に渡航する際の危険レベルが全く上がっていないことからも外務省の考えが伺えると思います。
もし本当に戦争が起こりそうなほど緊迫しているのであれば渡航禁止するのが当然の対処ですよね。有事に備えての情報収集というのであれば、同時に危険が起こる可能性がある国に対しての渡航に注意なり警告を呼び掛けることは必要なはずです。渡航に対する呼びかけも十分に邦人保護の一環ではないでしょうか。邦人保護に万全を期するとまで言及しているにもかかわらず、韓国に対する渡航レベルの危険度は全く上げられていないことは不思議でなりません。
邦人保護に万全を期するとの観点を踏まえたもの
邦人保護は当然一理あると思います。しかし邦人保護が必要となる有事とは何も北朝鮮と韓国が戦争になることばかりではありません。新大統領が就任することによりもし反日が強まるようなことがあれば中国で起こった暴動のように日本人に対しての暴行が起こらないとは言い切れません。もし暴動が起こった場合、当然邦人保護は必要になるのでこの名目で帰任することは仕方ないことです。
以上の3点が長峰駐韓大使が帰任する理由です。邦人保護も大切なのですが、一番強い目的は「情報収集」だと思います。韓国に対しても北朝鮮に対してもです。しかしその為に慰安婦像問題がおざなりになるのはまた別問題です。情報収集や邦人保護の為に帰任させるのは仕方ないとしても慰安婦像問題については「ある一定のカタチ」で毅然とした対応を取り続けることが大切だと思います。
慰安婦像問題について岸田外相は「今後も日本の強い意志を直接伝える」と説明しています。しかし、日本が駐韓大使を本国に召喚したほどの対応をしても毅然とした対応が出来ない韓国に、これ以上慰安婦像問題の進展は望めそうにないのではないかと思います。むしろ悪化するのが関の山ではないでしょうか。