2022年10月、北海道札幌市で起こった女子大生の殺人と遺体損壊の罪に問われていた小野勇被告の判決が確定しました。
どうして6年になったのかは同意殺人罪の1種である嘱託殺人が大きく関わっていました。
ポイント
- 検察側の求刑は懲役9年
- 弁護側は小野勇被告の心神耗弱状態と被害者の自殺願望を指摘
- 1審判決は嘱託殺人を考慮されて懲役6年
- 2審の札幌高裁も1審の判決を支持し控訴棄却
- 最高裁でも上告棄却。懲役6年が確定
経緯
小野勇被告が2022年10月に札幌東区栄町の自宅アパートで小樽市に住む当時22歳の女子大生を窒息死させた。
小野勇被告と被害者はSNSで知り合い女子大生は死にたいという気持ちが強かった。
実行する前の9月27日に札幌駅で一度会い、カラオケ店で被害者の女子大生に殺害されることを望んでいるのかを確認。
2022年10月3日朝、被害者は人と会うと家をでる。
被告は犯行が警察に発覚しないようにDMのやり取りなどの消去を被害者に依頼。
10月3日は大量の睡眠薬などを服用させたが深い眠りにつかず、頸動脈を抑えて意識を失わせようとするが失敗。
4日、ナイフでの殺害を断念し、女子大生の首を両腕で絞めて窒息死させて札がい。
5日、遺体解体のために浴室に運び血抜きをするためにナイフを左わきの下部分に刺して遺体損壊。
夜にノコギリを購入するが解体に踏み切れず遺体を放置。
6日、SNSのDMで遺体の写真を見せてほしいと頼まれ遺体の一部の写真を送信。
大雑把にまとめるとこんな感じです。
遺体の写真をDMで送るなんて普通の感覚じゃ理解できないですよね。
小野勇被告は刃物で左脇部分を切りつけたとして嘱託殺人と死体損壊などの罪に問われていました。
1審判決
1審の初公判は札幌地裁で8月31日。
初公判の様子はこちらをどうぞ。
判決公判は2023年9月22日。
検察側の求刑は懲役9年。
自殺を手伝ったことがあるかのような嘘をつき、同意を得て実行している。十分な計画性があり完全責任能力がある
https://www.uhb.jp/news/single.html?id=37901
弁護側は小野勇被告は心神耗弱で被告も死にたいという気持ちが強かったとして執行猶予を求めた。
心神耗弱の状態で、自殺に対するハードルが低く、被害者も死にたいという気持ちが強かった
https://www.uhb.jp/news/single.html?id=37901
井下田英樹裁判長は懲役6年の判決。
小野被告について「心神耗弱の疑いはなく完全責任能力を認められる。非常に悪質で厳しい非難に値する」と指摘する一方、「被害者の嘱託に基づく犯行だった」
https://www.uhb.jp/news/single.html?id=37901
小野勇被告は懲役6年の判決を不服として札幌高裁に25日付で控訴。
被告の遺族には謝ってましたが控訴するということは懲役6年が長いと感じたということでしょうか。
ちなみに遺族は死刑を望んでいました。
「死刑にならなかったら家に来て娘の仏壇の前で両手をついて謝らせたい」と語っていたようです。
2審判決
2024年2月14日札幌高裁で控訴判決。
成川洋司裁判長は「判決に不合理なところはない」として懲役6年の1審を支持し、被告側の控訴を棄却。
小野勇被告はその後上告。
控訴棄却判決とは「控訴には理由がなく原判決が正当であると認める判決」です。
最高裁
2024年5月24日付、最高裁第2小法廷・尾島明裁判長は小野勇被告の上告を棄却。
これにより小野勇被告の懲役6年が確定。
所感
当時はすごく話題になりましたが最後まで追っているメディアは少ないのでしょうか。
あまり表立ってニュースになってないのが印象的です。
この裁判のポイントは「嘱託殺人が適用されるかどうか」ということでした。
嘱託殺人は同意殺人罪の1種で「被害者から依頼されて殺害する行為」にあたります。
ちなみに今回の嘱託殺人が含まれる同意殺人罪の刑罰は懲役6月以上7年以下と最長でも7年と短いです。
(自殺関与及び同意殺人)
法務省刑法202条より
第202条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を
受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は
禁錮に処する。
検察側は9年の懲役を求刑していましたが今回は嘱託殺人罪が認められるとされる客観的な証拠(メールやSNSなどの履歴、抵抗した形跡など)が残されていたことが決め手になったようです。
弁護側が主張していた心神耗弱状態は認められず、執行猶予が付かなかったことから小野勇被告は責任能力があったと判断されたようです。
被害者の女子大生をそこまで追い込んだのは何だったのかという疑問は最後まで残されたまま。
せめて残された遺族が裁判の終了を機に前に進めるといいのですが。